学校で係りの任命を受けるときに嬉しかったでしょうか、嫌だったでしょうか?
私は嫌だった事の方が多かったように感じます。だってやらなくても良かったことをやらないといけなくなるのでしょう?
でも、そもそもどうして役割分担をしないといけないのでしょうか?
キャンプで与えられる役割なんて、殆どが「班長」「グループ長」みたいなまとめ役(以下「班長」)になった人が全部しないといけないのが現状ではないでしょうか?
一番は効率化の為だと思います。
カレーを作るとして、全員でジャガイモの皮を向いていたら「誰か米研げよ!」って言ってしまいそうです。
大きな目標を達成するために必要な作業を細分化して、それぞれを手分けして行う事で早く容易に目的を達成できるようになるのです。
ここでキャンプの役割分担との違いが出てきます。
「班長」って分担してする作業じゃないよ!!
大人が「班長なんだから」ってまとめ役やら伝達を伝える何でも便利屋って言うのが現実でしょ!?と思いませんか??
アシベの経験上、大人の使いっ走りになる「班長」と「班長」の話を聞いていればいい「他のメンバー」にグループが2極化していることがあまりに多いと感じます。
こんなのは役割分担ではなく生贄の選出ではないでしょうか。
本当は「班長」も役割の一つのはずなのです。でもカレーの役割分担は上手くできて、グループの役割分担が上手くできない理由は何なのでしょうか?
いくつか考えられる原因を挙げてみましょう。
カレーを作る時は、全員が最終目標を把握していて、かつ必要な作業を全員が把握している。
ここが一番注目するべきポイントで、これが出来ていないキャンプの役割分担はキャンプカウンセラーのミスだと私は感じます。
なぜ「班長」が役割として機能していないのか?
それは、グループの中の「役割」そのものの必要性もわからないまま「班長を決めなければならない」という結果が先行しているからだと思います。
「今から30分グループみんなで遊びましょう!何して遊ぶ?」と聞いてみて、「みんなで○○をしようと決まりました!」って言いに来てくれればそれで良いのです。
みんなの意見をまとめる様子を見ていれば、誰が班長に相応しいかは子どももカウンセラーも自然と感じているでしょう。
もうひとつの問題として「班長」以外の役割が無い事です。
カレー作りで例えるなら、一人でカレーを作って出来上がったら他のメンバーを呼ぶシステムになっているようなものです。
正確に言うなら「班長」という役割が間違って認識されている為に他の役割まで「班長」の仕事になってしまっているのではないでしょうか?
具体的に考えやすいように、キャンプの体制で考えましょう。
キャンプ全体でいう「班長」はキャンプ長(学校の校長先生のポジションですね)になります。子どもから見える仕事って「開会式で挨拶する」「表彰状渡す」程度じゃないでしょうか?
間違ってもプログラムごとにキャンプカウンセラーを呼び出して進捗確認したり、次のプログラムの準備に走り回ったりなんて場面は殆ど見かけないはずです(スタッフが少ないとキャンプ長も走らされますが)
しかしながら、全体の動きを把握して、みんなが計画通りに過ごせているか見守っている。これが一番のキャンプ長の役割だと思います。
では、何故キャンプ長は自分が走り回らずに見守るだけという位置に居られるのか?それは代わりに走り回ってくれる役割の人がいるからです。
プログラムで何を準備しておくべきなのか?全体への説明はだれが行うのか?あらかじめ予想されるトラブルにはどう対応するか?等々の役割を誰がどう行動するかを決めて、
お互いがその役割を理解して行動出来ているから見守るだけという状況が作れるのです。
もちろん、子どもの活動支援と一番近くで危険から子どもたちを守る役割が与えられているのがキャンプカウンセラーであるあなたですよね!
この用意周到に準備された組織体制を今日出会ったばかりのグループで真似しようというのです。
とてつもなく難しい事になるでしょう。しかしながら、この難しい事をなんとかするのがキャンプカウンセラーに与えられた役割の一つだと考えます。
なぜなら、この問題はそのまま「グループの成長」という問題につながっているからです。
さて、「班長」以外の役割ですが、何が良いかはキャンプ次第だと思います。
例えば、キャンプ中に使う道具を班が預かるのなら「備品係」「荷物係」なんてものをおいても良いですし、炊事の火おこしが奪い合いになるのであれば「火おこし係」をおいて当番制にすれば良いでしょう。
しかし、キャンプ全体の中で「保健係」を置いてほしい等の要望もあると思うので、キャンプ指導者全体でどんな係りが必要になるかを考えてみた方がよいと思います。
何であれ「役割」が与えられると、必ず必要になるものがあります。それは「責任」 です。
グループとしてその子どもに「任せた」事に関しては、その子どもが役割を全うする事が求められます。つまり「責任」が発生します。
この責任が与えられることによってプレッシャーと達成感を得られることが出来、役割がある事の自覚が持てるようになるのです。
ここで問題になるのが勘違いされた「班長」の任務です。「班長」は任せた仕事を把握はしていますが、手出しはしてはいけません。
つまり、班長であれカウンセラーであれ「支援」をすることは可能ですが、役割を「奪う」事はしてはいけないのです。
役割分担がグループに与える一番の効果はグループの中での「居場所」だと私は考えています。
役割を与えられるということは、「あなたはこのグループの一員で、一員としてこの任務をこなしてね」と言われている事になります。
そして、その与えられた役割をこなすことで、グループの一員と認められる事になるのです。
グループの中で認められるには一番はグループの中で活躍する事です。
「○○君がいたからこのなぞなぞが解けたね!」と言ってもらえれば、その子どもはグループの中で認められヒーローになれるわけです。
プログラムの中の一部であるなぞなぞを例にあげましたが、このチャンスを生活の中で作ることが出来る場が「役割」に当てはまると思います。
現状ではこのチャンスが巡ってくる役割は班長だけではないでしょうか?
そのため、役割ばかりの班長が班の中で最も認められる立場になり「班長をやりたい」と思う子どもが偏って出来てしまうことになると思います。
役割分担も道具の一つである。と私は考えます。
キャンプの目的は「ねらい」の達成ただ一つです。その為に知らぬ間に活用されている役割分担とは、過去に賢い人が悩みぬいて作り上げたシステムの一つではないでしょうか?ただ現状ではその事実が伝えられず忘れられてしまったのだと考えています。
役割分担があるから「しなければいけない」というものではなく、キャンプファイヤーのようなプログラムと同じように、良いグループを作るための「手助けをしてくれるもの」だと思ってより良いキャンプ生活にしてもらえればと思います!